今日は、ふと思い立ってマウントビクトリアに登ってきた。
特に目的があったわけじゃない。仕事もなかったし、誰かと会う予定もなかった。
なんとなく朝の空気が気持ちよくて、どこかへ行きたくなった。
Googleマップで適当に場所を探して、なんか良さそうだなと思ったのが、マウントビクトリア。
ウェリントンに来てからずっと気にはなってたけど、なかなか足が向かなかった。
でも今日は、なぜか行ってみようって気持ちになった。
歩き始めてすぐ、思ったよりも傾斜があってちょっとしんどかった。
登山ってほどじゃないけど、息が切れるくらいには坂が続く。
途中で地元っぽい人に抜かれたり、観光客らしき人とすれ違ったりしながら、
ただ黙々と坂を登る時間が続いた。
少し汗ばんできたころ、鳥の鳴き声が近くで聞こえて、ふと立ち止まった。
風が木々を揺らして、枝と枝が擦れ合う音も静かに響いてくる。
ウェリントンの街の中心からそう遠くないのに、
まるで別世界にいるみたいだった。
途中、木々の間からちらっと海が見えて「おっ」ってなった。
でも一番すごかったのは、頂上に着いたとき。
そこから見えた景色は、ほんとうに息をのむようなもので、
この街って、こんなに綺麗なんだ…って、しみじみ思った。
青い海、空を飛ぶ飛行機、風に揺れる木々。
遠くに広がる家並みと、港に泊まるフェリー。
自分が今いる場所が、まるでポストカードの中みたいで、
でも同時に、なんだか遠く感じた。
というのも、すごく綺麗な景色を目の前にして、
ちょっとだけ泣きそうな気持ちになったから。
なんでだろうって思ったけど、
たぶん「誰かと分かち合いたい」って気持ちが、心の奥にあったんだと思う。
目の前の風景があまりにも美しかった分、
「今この瞬間を、誰かと一緒に感じられたらな」と思ってしまった。
SNSには綺麗な風景ばっかり載せてるけど、
正直言うと、ここ最近ちょっと孤独を感じてた。
仕事も思うように増えないし、英語が通じなくてへこんだり、
みんなが楽しそうに笑ってる横で、自分だけ会話についていけなかったり。
家に帰っても、話し相手はいない。
それでも、寂しいなんて思わないようにしてた。
でも今日みたいな日は、ふと気持ちがあふれてしまう。
頂上に座ってしばらく景色を眺めていると、
横に座っていた観光客のおばあちゃんが話しかけてきた。
「ビューティフル、でしょ?」って、笑いながら。
うまく返せなかったけど、私も「イエス」って笑い返した。
たったそれだけのやりとりなのに、なんだかちょっと心が軽くなった。
誰かとちゃんと話せなくても、言葉が通じなくても、
“同じ景色を見てる”ってだけで、つながれる瞬間がある。
それって思ってた以上に、あたたかい。
だから、来てよかったと思う。
誰かと一緒じゃなくても、こうして自分の足でここまで登って、
この景色を目に焼きつけたこと。
それだけで、なんだか一歩前に進めた気がした。
帰り道、風が吹いてちょっと肌寒かったけど、
心の中は少しだけ、あたたかかった。
ひとりで見たこの景色は、もしかしたら今までで一番、
「自分のためだけの時間」だったかもしれない。
またしんどい日もあると思うけど、
今日のことを思い出したら、ちょっと頑張れる気がする。
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